♯直生side
本当は、久しぶりだったわけじゃない。
会議室の窓から、
スタッフの合間から、
遅くまで明かりのつくオフィスで、
彼女を見かけた。
なんとなく、居そうな気がするときは。
なんとなく、歩みを遅めて。
彼女の顔が覗くと、その日は“当たり”な気がした。
「いつまで忙しいんだろうなー。」
「珍しいっすね、直生さんが“忙しい”なんて。」
メイク待ちで頬杖をつく俺に、チョコが驚いたように返事をする。
「いや、俺じゃないんだけどね。」
あの調子だと。
いつまでたっても、あの番号は携帯を鳴らさない。
踊り込んだ金曜日の夜。
次の収録に間に合わないからと、マネージャーからの呼び出しで慌ててスタジオを飛び出した。
小走りで通りすぎる第一会議室に、まだ光が残っていることに気づく。
誰かいる____________?
ぼんやりした蛍光灯を潜り抜け、ゆっくり近づいて覗き込んだ寝顔に
息を飲んだ。