外で携帯を耳に当てている後ろ姿を確認して。
コーヒーを注ぐカウンターの中の金田さんを追いかけた。
『あのっ。』
「お、どした?トイレ?」
『どうしたらあんなにフカフカに焼けるんですか?!』
一瞬丸くなった目は、ふわっと三日月に降りて。
「あれはね・・・」
『え、そーなんだ!簡単!それだけですか?』
私にも出来そうな、“種明かし”に。嬉しくて盛り上がる。
「ていうかさ、陽斗にはそんな気をつかわなくて大丈夫だよ。
君には、もう十分惚れてるから。笑」
ミルクいる?というジェスチャーに、ふるふると首を振った。
『今日、お休みなのに開けてくださってるって聞きました。
ありがとうございます。とっても楽しい♡』
「いえいえ。笑
理沙ちゃんにやっと会えると思って、すごい楽しみにしてたんで。」
『え?』
「陽斗さ、ちょっと休み取れるたびに、俺らに声かけてくれて集まるんだけど。
最近は君の話ばっかりで。」
まだ戻って来ない背中に、思わず目をむける。
「君がいると、息ができないってさ。笑
あ、これオフレコね。」
差し出されたグラスに
立ったまま、口をつけた。
唇が、あまりにも熱くて。
「友達だから、あんま効力ないかもしれないけど。あいつは、間違いない男だよ。」
他人に、こんなにはっきり言い切らせる要くんは。
どう転んでも、
間違いない男なんだと知る。
「あ、これもオフレコね。」
『はい。笑』
茜と薄紫色が絶妙に混じり合う空を背景に
携帯を下ろした要くんは、顔を上げて私と目が合うと。
口角を上げて
ふわんと、笑った。