“手を引かれて”
連れて行かれた場所は。
『・・・!なにこれ!』
「うっわ、やばい。」
車を降りたら、一面に広がる空と海。
浜辺に臨むカフェの白と木目も、絵本の世界のように可愛くて完璧で。
水面に反射する太陽の光は柔らかくて。夏の終わりの夕方を感じさせる。
『きれー・・・。』
久しぶりに訪れた鎌倉の景色は。
私のストライクゾーンの中央に真っ直ぐ入ってきて、胸がぎゅっとなった。
「まだ暑いね。」
『ねー!日焼けしそう!』
急上昇するテンションに、思わず声が大きくなると。
海から私に移った視線が、ふわんと柔らかくなった。
「行こっか。」
当たり前のように奪われる右手に、かぁっと頬が鳴る。
い、いいのか?外なのに。
要くんの背中の向こうに、カフェから手を振る人が見えた。
「いちゃいちゃすんなよー。」
「ごめん。笑」
カランカランと鳴る木のドアを開けてくれた
その人は
「待ってました、やっと会えた。」
と私に微笑んだ。
『え、あ、はい・・・?』
「理沙、どこに座りたい?」
微笑んだ要くんの目が、急に覗きこんで来て。
危うく息が止まる。
「そりゃ、やっぱりテラスだろ。サンセット、すげーぞ。」
『サンセット!見たい!』
思わず声をあげた私に。
「あっは、可愛い。笑」
手の甲で口元を抑えて笑う要くんと。
「陽斗、お前思った通りだぞ。笑」
そんな要くんを見て豪快に笑う、その人。
そんな2人の間で、反応に困る
私。