見上げれば。
手の甲を口元にあて、楽しそうに笑う色男。
七「ここ、そんな仲良くなってたんだ。なんか安心したわ。笑」
瀬「・・・七瀬くんいたんだ。全然気づかなかった。」
七「だろーね。笑
はい、理沙子の荷物。空港まで、よろしくお願いします。」
瀬「・・・いろいろ突っ込みたいけど、忙しいんでまた後でね。」
受け取った荷物を押し、迎えの車のドライバーさんに渡しに行く瀬名ちゃんを目で追ってると。
頭の頂上に、柔らかい感覚。
大きくて温かい手のひら。
「気をつけて帰れよ。」
『子供じゃないんだけど。』
「俺にとっては、そういう感じだよ。」
『そういう感じって何?!』
「大事で心配で目が離せない。」
ぐうっと、出かけたケンカ腰を飲み込む。
いつからこんなに、私に甘くなったのか。
私が甘い色男に弱かったなんて、六本木が泣くわ。
「理沙子さーん!」
車の前で手を振る瀬名ちゃんに、手を振り返して航大を見上げた。
『じゃね。いろいろマハロ。』
「理沙、」
振り向くのと同時に。
首に通されたのはクロムハーツのネックレス。
「持ってて。」
『え、いいよ、いらないよ。私も持ってるし。』
「俺のを持たせておきたいんだよ。」
『は?』
両手をデニムのポケットに突っ込んだまま
私の耳まで腰を屈めて
「首輪、な。
俺のだって、分かるように。」
あんたのもんじゃねーー
いつもの憎まれ口の代わりに、私は見事に赤面した。
噛み締めた唇が熱い。
_______________負けそう。
六本木が、泣いてる。