重い、頭が重い...。
飲みすぎたなぁぁ...
ベッドの中で思いっきり伸びをする。


今何時だろう?

すっかり明るくなった部屋の中で、枕元の携帯電話を探した。


着信履歴、20件。
LINE、50件。

うお...たまってる。
さすがに15:00だもんね。みんな今夜の準備を始めてるよね。



LINEのトーク画面をざっとスクロールして、一瞬止まる。


「本日帰国」

タップしてトークを開けば、それだけたった4文字。
「りょーかい」呟いて、返事はせずに画面を落とした。















「理沙さん、8番ご指名です」
「理沙さん、5番お帰りです」
「理沙さん、お電話入ってます」


六本木の、“たぶん”高級クラブ。
“たぶん”というのは、私自身がトップ層に近づいてるからこその謙遜で。


暗くて、キラキラで、綺麗な嘘に塗り込められた世界。
私は毎晩ここで、現実と架空の間を上手に泳いでいく。


それにしても、今日は忙しいな。
私的にブレイクタイムな火曜日なのに。期待と反して、私の名前は呼ばれ続ける。




ボーイ「理沙さん、お願いします・・・」

『ごめんね、東ちゃん。。ちょっとだけ、挨拶してきてもいい?』

「いいよいいよ、俺待ってるよ。
けど、まだ理沙ちゃんここに5分も座ってないからね。大丈夫よね?」


そう言って、ギロリとボーイの葵ちゃんを睨む。

「大丈夫です、すぐお戻しします。
理沙さん、カウンターお願いします」



葵ちゃん、余裕の笑顔で返すけど。


「こえーこえー、あの顔まじだわ。理沙、すぐ席戻ってね!」

『いやこれは仕方ないよねw
さくっと終わらせるぜ、誰来てるの?』


カウンターに向かいながら、小さく伸びをする。
うぉー、もう23:00か。ラストまで、今日ももう一踏ん張り。




「わんちゃんが来てんの。長話禁止よ」