「そのときに凛くんに伝えたみたいなのよ、妊娠のこと。そしたらちょっと口論になっちゃったみたい」
「え」
「そっちに迷惑かけるかもって、あの日凛くんのお母さんから連絡が入ってたのよ」
あー、なるほど。
〝……逃避行〟
凛は、それで私のところへ逃げてきたのか。
「そういうことね。通りであの日の凛、機嫌が悪かった割に家に帰りたがらなかったわけだ」
「お母さんもちょっと心配になっちゃって。
ほら、もうすぐだしねぇ入試。
奈央も分かってるとは思うけど、あんまり凛くんの邪魔にならないよう…
「分かってるって。
私だって凛に受かって欲しいもん」
辻褄が合ったことに納得したところで、私はお母さんの小言を遮ると、茶碗を重ね合わせる。