「ん、」
凛が肉まんの最後の一口を
私の唇の前に持っていく。
「美味し〜」
パクッとそれを頬張ると、口の中いっぱいに肉の旨味が広がった。
「食べたらさっさとウチ帰れよ」
「言われんでも帰るわい」
帰るは帰るんだけどさ
一個気になることがあるんだよね。
その鬱陶しそうな目にかかる前髪。
それこそ勉強の邪魔にならないの?
「ねえ、凛」
机に座り勉強を再開しだした凛の元へ近づいて、中学のジャージのポッケからたまたま入っていたピンを取り出す。
「なに、っ」
振り返ったら、私がすぐ後ろにいることがビックリしたようで目をまん丸くしながら固まる凛。
「っは、なにしてんの」
そんな凛の前髪を指ですくった瞬間
凛は瞬時にその指を掴んでそれを阻止する。
「前髪留めてあげるよ」
「は、?」
「鬱陶しいでしょそれ」
生憎入ってたピンが、サンミオのポムッコ付で申し訳ないけれど。
「いいし別に…」
「切るならいいけど、どうせ前髪切らないでしょ」
抵抗する凛の腕を払って
もう一度凛の前髪を指ですくう。
たったそれだけなのに顔つきが険しくなる凛に、内心邪魔してるってこういうことか…と自覚した。
「はい、終わり。勉強頑張ってね」
「うるせぇさっさと帰れ」
「はいはい。邪魔してすみませんでしたー」
ホントはピン付けると可愛くなっていいじゃん、まで言いたかったけど、言った先の凛の反応は容易に想像できるから、止めとこ。