暁はそれ食べたらお風呂入ってすぐ寝ること。涼と空君もあまり夜更かししないのよ。お母さんは口早に告げた。
あらかじめタクシーを呼んであったらしい。タクシーが到着すると夏原さんとお母さんは慌ただしく出かけていった。私は席を立つ気になれなかったけど、暁と空は玄関先で二人を見送っていた。
その後、暁と空は私の向かい側に並んで座り食事を再開した。三人でする初めての食事。
暁はすっかり空に懐いていた。鰻を分けてもらえたのが嬉しかったみたいだ。空もひとりっ子とは思えないほど上手に暁の相手をしていた。
「暁君、鰻食べれるなんて偉いな。俺子供の時ダメだったから」
「そうなのー? こんなにおいしいのにー?」
「ホントにな」
暁と空は今日知り合ったとは思えないほど早く打ち解け、仲良くご飯を食べていた。暁はいつもより明るい気がする。
そんなどうでもいいことに気付けたのも、自分がいつもと少し違ったから。
さっきから気持ちがおかしい。胸が不安でざわざわするような、嬉しくてウキウキするような、どっちとも言える変な感覚。
今までは、お母さんと一対一の言い合いをすると必ず私が負けていた。味方になって助けてくれる人なんていなかった。理不尽なお母さんの言い分に苛立ちと傷を重ねていくばかりだった。
だけど今日に限ってはそこまで傷つかずにすんだ。空のおかげだ。空がああ言ってくれたから。私は間違っていないって言ってくれたから、心の重たいものがとても軽くなった。反抗心でお母さんに言い返していた時には得られなかった満足感と爽快感を感じた。