名前だけは知っていた。 



大手企業の跡取り息子でイケメンで性格が良くて勉強も運動も何でも出来る完璧だ人だって、入学当初有名だった。



だけど、私は別に興味がなかったし、いつも女子に囲まれてるから見たことがなかった。



だけど、今納得した。
性格はいいとは思えないけどそれ以外は完璧だもん。



「名前は知ってた感じ?」



ニヤッっと満足そうに笑う、九条陽斗。



「そりゃ、あんだけ騒がれてたらね」



「ふーん」と興味なさ気に答えると



「じゃあ、明日からよろしくね?朱里。せいぜい頑張ってよ」



頭をぽんぽん、と撫でて去っていった。



な、名前。呼び捨てで呼ばれた。
しかも、ぽんぽん、ってされたぁ……。



そんなこと慣れてない私は顔が熱いのを感じながら、彼を見送っていた。