音楽も終わって午前の授業は全て終わった
次はお弁当の時間

私は鞄から弁当箱を出して
1人で食べるために屋上へと向かおうとした


すると前に立ちはだかる人が1人
一ノ瀬だった

「何」

「弁当食べよー!」

「一緒に食べないって言ったでしょ」

「いーじゃん、1人で食べたらまずくなるしー」

「じゃ」

一ノ瀬の言葉は全てスルーして
私は教室を素早く出て行った


やっと屋上に向かえる、と少し
速度を速めたとき

ドンッ


「いった……」

「わりぃ。前見てなかっ……ってなんだ。柚華かよ」

なんだってなんだ
こっちこそなんだ、椎名かよだっての

そう思いながらも頭の中に押しとどめて
私は前で立ち上がった椎名を見る


気づけば私の手の中から弁当箱が消えていた
ぶつかったときに落ちたらしい

私が弁当箱を取ろうと立ち上がろうとしたその時

「………!」

足の痛みが、私を襲った

ズキン、ズキン

と脈を打つように波がくる


「はい」

はっと前を見ると、私の弁当箱があった
そして上を見ると椎名がいた

「ぶつかっただけで転けんなって」

そう言いながらも私に手を差し伸べた
自力で立つのが無理なことに気付き
私はその手をとった


「…ありがとう。んじゃ」

「おう。…あ。今日は俺等と一緒に弁当食わねーんだ?」

「食べないって言ったでしょ」

「ふーん。じゃーな」


2人はすれ違ってお互い歩いていった

「あ」

が、5メートル離れたところでまた呼び止められる

振り返れば椎名がこっちを向いてポケットをあさっていた
そして目当てのものを見つけたのか、それを取り出し
こっちに投げた

私は何か分からないまま条件反射でそれを受け止める


「…は!?」

「それ、足に貼っとけば?」


そう言ってまた歩いていった
見ると、私の手には湿布


……足、気づいてたんだ


私は心の中でありがとうを言って

再び屋上へと歩き出した