「うわ!柚華の教科書バシバシじゃんー何こぼしたわけ?」
悪びれもなくそう言う一ノ瀬を蹴りたくなったのは
今月に入って何回目だろう
絶対50回はあるって
そう思うとぞっとした
「またシカト…?」
呆れた顔をして私を見る
だから私も呆れた顔をして言ってやった
「あんたのヨダレだから」
「え…!?嘘まじで?いやいや、俺そんな事しねぇーって!」
「いや、タカ、爆睡だったから」
「えぇ!?直まで!ってかお前等この間俺の顔に落書きしたっしょ!?」
「「してねぇよ」」
「怖っ」
ここ数日、特に私が教科書を貸してから
こんなのが私の日常になっていた
何故か休み時間や移動の時、昼休みにまで一緒にいるようになってしまった
こんなのじゃ、だめ
だめなんだ
このままこの2人と思い出を作ってしまえば
この世界でどんなに楽だろう
でも、そうする度に亮との思い出が
すごく昔のことの様に思えてくる
だんだんと隅へとおいやられていく
そして、いつかは消えてしまいそうで
2人で過ごした日々が、消える
そんなこと、あってはならないんだ