「……先生、私の教科書にヨダレ垂らす人がいるんですけど」
「蹴れ」
狭いスペースで授業を受けていると途中で一ノ瀬が寝始めた
初めは静かだから良かったものの、いびきが煩くなってきた
しかもヨダレ垂れてるし
まじ最悪
私が蹴ろうと少し脚を動かしたとき、
「しーっ」という声が横から聞こえた
「顔に落書きしてやろー。木村さんもやる?」
黙って頷く
だってこいつまじでダルイし
これはやらなきゃ損
そう思って私は油性ペンを手に取った
+++
「やべー俺等絶対落書きのセンスあるって。」
「……」
日頃のストレスで夢中に一ノ瀬の顔に落書きをしていた
今気が付いて改めて顔を見てみると、凄い顔だった
目を閉じているのに開いたような目
変な模様にひげ
「「………ぷっ」」
堪えきれなくて笑ってしまった
見ると隣で椎名も笑っていた
キーンコーンカーンコーン
「ふぁーねむっ!俺すげー爆睡してた!?
って柚華、何笑ってんの?直も!」
「「別に」」
「うわ!ハモってるし!」
その後も堪えきれずにずっと笑っていた
その時は夢中で気づいてなかった
こんなにもとけ込んでいたなんて