「マジか……そっか……俺の気持ちは全然伝わってなかったか……」

「え……な、なに?」

「あのさあ一花ちゃん、俺がおばさんに協力してもらってまで今日わざわざここに来たのは、別に一花ちゃんを責めようとしたわけじゃなくて」



千晴くんが私を抱きしめる手を緩めたから、自然とまた顔を向かい合わせる形になる。

彼は私の両頬に手を添えると、むに、と軽く引っぱってみせた。



「俺、一花ちゃんのことすきなんですけど。それこそ昔から。なんで気付かないかな」



拗ねたようにそうつぶやいたその言葉の意味を一瞬理解できなくて、固まって。

だけど意味がわかったとたん変な声をあげながら思いっきり身を引こうとした私を、千晴くんが驚くほど素早い動きでホールドした。



「ちょっと一花ちゃん、今なんで逃げようとしたの?」

「やっえっまっ……ちょ、あの、落ち着いて」

「うん、一花ちゃんがね」



真顔で言われてこっちは泣きそうになる。

待って。今千晴くん、なんて言ったの?

……私のこと、すきって言った?



「う、うそだぁ」

「嘘じゃねーよ。だいすきだよ一花ちゃん」

「だ……だって私、5歳も年上で、」

「そりゃまあ、20歳と15歳って言えばちょっと引かれそうだけどさ。でも今は、一花ちゃん27で俺22じゃん。全然おかしくねーって」



言いながら、宥めるようにポンポンと背中を叩かれる。

たしかにこの状況じゃ、どっちが年上なんだかわからない。ぐす、と鼻をすする私をあやしながら千晴くんはさらに続けた。



「つーか、おかしくなくなるこの歳まで俺は会いに来るの我慢してたんだよ。だから一花ちゃんも逃げないで、いい加減俺と向き合ってよ」