「え?」

奈津子が瞳を揺らして僕を見た。

「……何がですか?」

「智明の事故です。怪しいにおいがプンプンします。あと、焦げたにおいがプンプンします」

「ああっ!!」

奈津子は急に立ち上がってキッチンへ向かった。
僕の口にはクッキーが入っていなかったので今回はかすが詰まることはなかった。

「あーあ…またやっちゃった」


キッチンから落胆の声が聞こえて、僕がひょいと顔を出すと奈津子がオーブンをのぞきこんで項垂れていた。

「あ、ごめんなさい…続きどうぞ」

僕に気付いた奈津子が慌ててそう言う。

「はい、えぇとつまり、智明の事故は本当に偶然だったのか、あれは事故ではなく……」

やはりこういうことは言いづらい。奈津子の顔が歪んでいく。

「でも…毅さんは本当の家族みたいで娘もなついてましたし!」

「いや別に毅を疑っているわけではないですよ。ただ、智明と周りの様子の変化、何か裏がありそうな気がしません?」


奈津子は毅を疑ってしまった気まずさからか、困ったように首をかしげたまま黙り込んでしまった。