「続ける。2、3日前、俺は行商の帰りだった」

そこで、お前は倒れていた。何故、ここへ来た?ラウリは少し眉を顰める。

「確か、私は―――」

何で?何でなの?

「……分からない。私は名前以外覚えて居ない。ごめんなさい」

「……ここは妖の住む世界。普通の人間が来ることは滅多に無い。お前が生きて行くには少し難しい所だ」

「どうすれば良いの?」

「どうしたい?」

質問を質問で返されても……。

「分からない」

「だろうな。記憶が無いのだったら思い出すまで住んでも良い」

「良いの?」

「思い出したら返す」

「……うん。宜しくお願いする」

「ああ。された」