外は相変わらず桜の花弁が舞っているけど、木には葉が所々に混ざっている。暖かい陽気と青い空がそれを引き立ている。

取り引きの件から約一週間後。特にそれと言った事件も起こらず似た様な日々を送っている。しかし、それが不満に思う事は無い。

「今日は良い天気だよね」

私は店のスペースと居間の区切りに腰を落とし、膝の上で寝転がり、瞳を閉じているラウリに話しかけた。

どうやら眠っていたみたいで、ゆっくりとその瞼を開き私を見上げる。

「……そうだな」

心地良い低音と寝起きで掠れた声が返って来た。はっきりとしていない表情は名状し難い色気を醸し出している。
流石に慣れたとは言っても、彼と居ると心臓が持たない気がする。

何を考えたのか、私の頬を抓ってきた。痛くないけれど、やっぱり子供扱いされている事に変わりは無いかもしれない。

「俺は『小遣い』を渡したか?」

「ううん、貰ってない」

当然、私も和菓子を作ったり、行商の手伝いをしたりしている為、月一でお金を貰える。

しかし、ラウリはそれを給料と言わない。小遣いと言っている。確かにお給料と呼ぶには程遠い額ではあるけれど、困りはしない。

「そうか。では出掛けるか?」

「うん。……えっ!?」

行商や四季神達に呼ばれない限り外に出ないラウリが、自主的に外に出掛ける!?

「ラウリ、熱でもあるの?」

心配になり、額をくっつける。……特に熱はないけど、どうしたのかな?

「お前は俺にどんな印象を抱いているんだ」呆れた顔で質問をされる。

「えっ、んー……格好よくて、頼りになって、かなり気分屋でマイペース」

「……そうか。で、行かないのか?」

普段から一緒に居るけど、どこに行くつもりなんだろう? それ次第、なんて言ったら駄目だし……。

「行きたいけど、どこか行きたい所でもあるの?」

遠まわしに訊いてみたら、その言葉を待っていたと言わんばかりのドヤ顔を決めた。容姿が良いから顔は絵になっている。