長い沈黙に息が詰まりそうだった。

何も言えずに俯いた俺の目の先には、こいつの鞄が置いてある。






「…菜…穂……」



「っえ…!?知ってたんですか…?」



「…まぁ…偶々……?」


俺は前から知ってたかのように嘘をついた。 

本当はたった今、鞄に書いてある名前に気付いただけなのに。 



「…嬉しいです!偶々でも先輩が知っててくれてたなんて……」


そう言って笑った菜穂は、ちょっとだけ可愛いと思った。 


「お前は、笑ってた方がいいよ。」



「え?」


「泣いてるとブスだし。」



「…ひどっ……」


―――チュッ……


頬を膨らまして喋る菜穂を黙らせるためにキスをした。 

ゆっくり唇を離してみると、菜穂は目を見開きながら硬直している…。



「ぷっ…!なにその顔?ていうか目くらい閉じろや!」


って感じで、俺はずっと笑いが止まらずにいた。


菜穂を見ると、硬直したまま顔だけが見る見るうちに赤くなっていく……。




「…やめてください……。本気にしちゃうから…//」