「分かりました…」


―――バサッ…




一瞬、何が起きたのか分からなかった・・・。


だってこいつがあまりにも躊躇いなく脱いでるから…



「…おいっ!本気にしてんじゃねぇよ馬鹿っ!!」


俺は急いで女の手を止めて、サッカー部の奴等に見えないようにそいつを壁の隅っこに追いやった。 


女は何が起こったのか分からないって感じの顔でつっ立ってて全く手を動かそうとしない…。


そんな事に気づいた俺は何故かこいつに怒りが込み上げてきた。



「てめぇ早く服着ろやっ!」



俺がそう言うと、やっと服を直し始めた。



「翔先輩は…、私の名前すら知らないんですよね…。」


不意にそんな事を言われて、俺は気付いた…。

そういえば、こいつの名前・・・

知らない。


「………。」



なんて言っていいのか分からなかった…。 


人を好きになった事のない俺には、今のこいつの気持ちが全然掴めない…。


ただ、
その顔が…
その声が…
とてつもない切なさを俺に感じさせる。