こんなにも思い出に包まれて、
いろんな優しさに支えられて、
たくさんの「好き」を貰って。
賢人は最後に言ったよね?
「愛しとる」って。
過去形じゃなかった。嬉しかった。
「俺も、ありがとう。」
そう言ったけどさ、
賢人が「俺」を使うのは
はじめて聞いたんだよ。
それもあんなに悲しそうで、
今にも泣きそうな声で。
それで気づいたよ。
傷ついてたのは萌音だけじゃない。
迷ってたのは萌音だけじゃない。
苦しんだのは萌音だけじゃない。
なんで賢人だけ?って悔やんだのも、
萌音だけじゃない。
1番しんどかったのは、賢人だったんだよね。
いつだって自分のことで精一杯のはずなのに、萌音を1番に考えてくれた。