「しぃちゃん?」

「え、あ・・・。ごめん」



亜衣の声にハッとして視線を戻した。
亜衣は私の視線の先を伺い、彼を見つけると再び私を見た。



「久賀くんが気になるの?」

「久賀くん・・・?あの人、久賀くんっていうの?」

「うん、たぶん。久賀千秋っていったと思う」



亜衣は彼を知っていたのか、そう教えてくれた。
久賀千秋。
私は知らない名前。



「中学が一緒とか?」

「ううん。久賀くん、確か県外の中学からこっち来たんだよ」

「へぇ。詳しいんだね」




亜衣とは1年の時も同じクラスだったから、亜衣も彼とは同じにはなってないはずだけど。




「彼も、結構有名だから」

「え?」

「久賀くん、喋らないんだって」




ちらっと彼を伺いながら小声でそう言った。