「あの子、里山皐月。確か、春から類ちゃんと同じ大学に行くはずだよ。」


松下さんがワイングラスを傾けながら 彼を見た。

「同じ大学に?じゃあ年下?」

「そうそう。」


2つも下なのか。全然そうは見えない。

彼がテーブルを去ったあとも、私の中の衝撃は収まらず、その胸のなかに わずかに小さく炎がちらついていたことを私は感じていた。


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今でもはっきりと思い出す。

少し控えめに挨拶を返した君の声を。

人見知りだ、と後から恥ずかしそうに笑う君の顔を。


どうして 出会ってしまったのか、その答えだけが分からずに私は今も罪を背負って歩き続けている。