なんでこんなことやってんだろ……

そんなこといくら考えても、答えなんか出るはずもない。

私はまた、ギターを抱えた。





如月沙羅は、街道の一角で弾き語りをしていた。

弾き語りは小学5年の時からやっている。

高校2年の今では、毎回見に来てくれる人もいる。

しかし、沙羅はギターを弾くことに憤りを感じていた。

7年もやっているのに、スカウトもデビューもできないからかもしれない。

聴きに来てくれる人が、自分に対してこれ以上の上達を求めないような目をしていたからかもしれない。

はっきりとした根拠はないかもしれないが、「やりたくない」そんな気持ちが芽生えたのかもしれない。

沙羅はギターをケースに押し込んだ。冷たかった。

「……なんで?」

なんで、自分はこんなことをやっているの?

そう言いたかったのか、

なんで、自分ばかりこんな思いをするの?

そう言いたかったのか、

自分の心がわからない。



「『なんで?』とは??」

沙羅が顔を上げると、見知らぬ男の子が立っていた。

「は?」

「『なんで?』とは、なんですか??」

どうやら彼は、沙羅の独り言に疑問を持ったらしい。

「あんたには関係ない」

少しきつかっただろうか。初対面の人に失礼な態度をとってしまった。

まぁ、どちらにせよ、彼とこれ以上話す気は無い。

「もう、今日は終わるから、じゃあね。」

ギターケースに入れ忘れたピックを握りしめ、沙羅は駅に向かって夜道を歩き出した。

彼は何も言わず、沙羅の背中を見つめていた。