彼がそう告げると、電車がもうすぐ来ることを知らせる音がした。
彼はするりと私の手を通り抜けて、手を自分の膝に乗せる。
彼の足は、ふくらはぎの辺りから下は見えない。これも彼の存在が生物ではないからだろうか。
「聞いてくれてありがとう」
待って、
「電車が来るよ」
待ってってば。
「僕たちも、これでお別れだ」
「待って!」
私はそう言って彼の前に立ち、彼の膝に置かれた手に自分の手を重ねて、前に屈んだ。
彼の唇に、自分の唇を重ねた。
感触は何もない。
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