それから、どれだけの時間、沈黙が続いたのだろう。


線路には、先程より強く降り出した雨が降り注いでいる。


サーッと降り続ける雨と、ぺたりと肌にまとわりつく雨の湿気と匂い。


時折見る彼の横顔。


若干透けている彼の体が、彼という存在の淡さを物語っているようだった。


「いつまで、そんな風でいるの?」


私は再度彼に聞く。

彼は黙ったまま、まだ遠くを見つめている。


「答えて」


私ははっきりとした調子で、彼に聞く。


「何か心残りでもあるの?」


そう私が聞くと、彼はゆっくりとこちらを向いた。


「あるよ」


「…なに?」


「七瀬なら、分かっているはずだ」

彼が困ったように微笑した。