「いっちゃんところの末っ子ちゃん、子ども3人目ですって。いーわねー。孫3人よー」
度々聞かされる誰かの孫話。
今日も、玄関の扉をあけた所で母の大きな声が響いてきた。
(誰だよ、いっちゃんて)
そう思いつつ、今日の春香には自信があった。
琉夏が家に来るのだ。
駅で待ち合わせして、一緒に帰ってきた。
お隣さんって素晴らしい!!
いつもは仕事で遅い琉夏が来たからには、今日こそ念願のプロポーズか!?
っていうか、親への挨拶、先にしちゃう?
もう、せっかちさんだなぁ。お父さん、今日遅い日だよ。
「こんばんわ。おじゃまします」
「あーら、琉夏ちゃん、いらっしゃい。上がって上がって」
やや緊張でした面持ちで、テーブルにつく私達。
私のいつもの席とは違うけど、琉夏の横、座っちゃった。
「オレ、結婚が決まりまして、親代わりにお世話になった藤崎さんに出席していただけないかと、お願いに来ました。」
スーツ姿で背筋をピッと伸ばしてお辞儀をする姿はまさに「娘さんを下さい」、
ではなかった。
(オレ、ケッコンがキマッタ??)
頭の中をぐるぐる回る。
(誰と?)
(何それ)
「ちょっと、琉夏、あんた私と結婚するんでしょ」
「はぁ?お前まだそんなこと言ってるんだ。いつの約束だよ」
冷たい目で見られて、心が凍りそうだった。
だけど、“約束”って、覚えていてくれたんだ。