「なんだ。付き合ってんの?」


(とんでもない!付き合わされたんですっ!!)



言いたくても言えないから口をパクパク動かした。
それなのに谷口ときたら。


「んーまぁな」


否定してよっ。全くっ!


「へぇー。大輔が女子とここに来るんてねぇー」


ニヤニヤしながら笑った。
私はそんなふうに好奇心に晒されるのが一番嫌い。


谷口は何のコメントもせずに席へと移動した。
その背中を追いかけながら、やっぱりハッキリ断っておこうと誓った。



「何にする?残念ながらコース料理は出せないけど」


メニューを手渡し、羅門って人がこっちを向いた。

耳にゴールドのリングピアスが光ってる。
他にもブルーの小っさいのまで付けてある。


(この人もヤンキーの仲間?もしかして元暴走族とか?)


「ねぇ、キミ、名前は?」


「えっ…ええ、ええ…と…」



マズい!吃った!


「ホタル」


メニューを見てた谷口が顔を上げた。


「ホタルっていうんだ」


私のこと見てる。
こっちが吃ってるのを知って、助け舟を出してくれた?



「ホタルちゃん?可愛い名前だね」


「あ…ああ、いいい、いえ、あの…」


ホントは『ケイ』と読むんです。
でも、この人が『ホタル』と呼び方を変えてしまって。


「羅門、ビーフシチューのセット2つ。お客さん待たすな。仕事しろよ」