その奥に閉じ込められた、キラキラの甘酸っぱい宝石の海。
「綺麗! おいしそう!」
昔見たアニメに出てきて憧れた、すごくきれいなアップルパイとまるで同じ。
絵に描いたようにとっても綺麗。
もう行儀のいい椿を演じる余裕はない。
フォークを握りしめてすでに臨戦態勢だ。
「元気ね。そんなに喜んでもらえたなら母さん嬉しいわ。今切り分けるわね」
ナイフがさっくりと音を立てて入れば、宝石のようなリンゴたちがこぼれんばかりに溢れだす。
「はい、どうぞ」
目の前に差し出された皿に乗った、美しい1ピースのアップルパイ。
フォークで大切に、ピースの先端を崩して、一口頬張る。