そして、滑らかに細いパイ生地を織りなし作られた、美しく目の揃った網目のふた。
最後の魔法とばかり、丁寧に卵黄を塗れば、一気にリンゴの宝石箱の完成だ。
うっとりするのもほどほどに、あたたかく色づくオーブンでじっくり焼き上げられる。
そうしてしばらくすると、ついに待ちに待ったときはやってきた。
「よくできたわ。さあ食べましょ!」
椿のお母さんとともにダイニングテーブルに、堂々と登場する。
身を乗り出せば、目の前に立ち上る、胸がいっぱいになりそうな甘くほくほくの湯気。
そんな香りに顔をほころばせたころには、いよいよ姿がお目見えする。
私は喉をごくりとならせて歓喜した。
こんがりきつね色に艶めく美しい網目のパイ。