私たちに絡んで撃沈しては、また絡みに来るあたり絶対M。

あ、因みに本名は、保坂 隆道(ほさか たかみち)。

まぁまぁイケメンと評しておこう。

それなりにモテるらしいし。

部活は日向と一緒で水泳部。

髪は、塩素で色落ちしたのであろう茶髪。

体は程よく引き締まっていて、足も長くスタイルがいい。

外見はそのまま、チャラい。

一応エースらしい。

のに、ちょっと残念なキャラのせいか、周りから一目置かれる、なんてことは無い。


と、簡単に脳内で紹介をしているうちに、仁菜と一言二言話したタカは、大人しく自分の席に戻っていった。






「……日和」

「ん?」


タカの憐れな背中を見送っていたら、いきなり仁菜が名前を呼んだ。

顔を見たら改まった感じの表情で、不思議に思って私も思わず背筋が伸びた。


「なぁに?」

「え~っとね……あのね、」


仁菜にしては歯切れが悪い。

心の中で首を傾げるけど、どうすることも出来ないので、待つことにした。

すごく言いづらそうだけど……なんだろう?


数秒の末、決意したように私の顔を真っ直ぐ見据えた仁菜は、驚くべき言葉を口にした。


「マネージャー……やらない?」

「…マネー、ジャー……?」


仁菜が所属しているのは、水泳部。

ということは、まさか……?


「水泳部のマネージャー…なんだけど…」

「え、」

「先輩のマネージャーがちょっとした事情で辞めるらしくてね……人数的に、厳しくなっちゃったの……お願い、できない?」

「……」

「…誕生日にこんなこと頼むのもおかしいって分かってるんだけど……お願いっ」


両手を併せて、可愛く上目遣いのお願いポーズ。

本当に、狙ってるんじゃないかってくらいにかわいい。

でも今は、それどころではなくて、


「……わ、たし…泳げないんだけど…」


脳裏に、冷たい記憶が掠める。


「ぁ、それだったら大丈夫。
マネージャーは時間測ったり、あとタオル洗濯したり、飲み物とか軽食用意したり、そんな雑用みたいなものだから……無理、かな?」


仁菜は、基本的に人に頼みごとをしない。

天真爛漫だけど、しっかりした子だから。

だから今回のことは、極めて稀なこと。

……しょうがないなぁ。


「わかった。引き受けるよ」

「……ほん、と…?」

「うん、私にできることなら」

「ありがとう……!!!」

「ふふっ、そんな顔しないでよ」


仁菜は泣き出しそうな顔をしていた。

よかった…引き受けて。

それなりに辛いこともあったのかも知れない。


「日和大好き!!」

「きゃあっ、ちょっと、いきなり抱きつかないでよ~」

「ごめん~~」


そう言ってなかなか離れない仁菜。


それから仁菜は、朝のSHRが始まるチャイムが鳴るまで私から離れなかった。


力になれるなら嬉しいと思う反面、不安が募る。


何も起こらないといいけど……