少し息を吐くと、肩に力が入っていたことに気がついた。


肩を抑えて、腕をぐるぐる回すと、気合いを入れた。


「っよし!」


今年の今日も、きっと何も起こらない。

大丈夫。

大丈夫。

そう言い聞かせて、玄関に向かった。



教室に着くといつものように、親友と挨拶を交わした。


「仁菜(にな)、おはよ」

「日和っ、おはよー!」

「なんか、いつにも増してテンション高くない?」


そう言ってケラケラ笑うと、当たり前じゃん、と返ってきた。


「だって日和の誕生日だもん」

「いや、普通テンション高いのは私のはずでしょ」

「まぁまぁ、細かいことは気にしないっ」

「相変わらずあんたって子は……」


ちょっと的の外れた親友の笑顔に苦笑をこぼした。

高1の時に出会ってから変わらない。

この無邪気さ、輝く笑顔。

眩しいほど白い肌に、可愛らしいえくぼ、笑うと見え隠れする八重歯。

周りの男子の視線を意図せず釘付けにする、そのオーラ。

明るい性格。

どちらかと言うと冷めてると言われる私とは正反対な私の親友、高根 仁菜(たかね にな)。

ニッコニコしながら、可愛くラッピングされた袋を私に差し出した。


「はいっ」

「お、プレゼント?」


わくわくしながら聞くと、うんうん、と元気に頷く。

今日も仁菜はかわいい。


「早く開けて!」

「はいはい、………おぉ」


ガサガサと袋を開けると


『♡Happy birthday H i y o r i ♡』と書かれたカード。

香水らしき黄色い瓶。

シュシュ。

お花モチーフのイヤリング。


とにかくどれも、センスに溢れた、可愛らしいものたちだった。

さすが仁菜。


「仁菜、ありがとう!」

「ううん、選ぶの楽しかったよ~。どんどん使って!」

「ごめん勿体無くて使えない…」

「何でよ~、デートの時にでも使ってよ~~」


ぶー、という感じに唇を尖らせる仁菜。

本当何してもかわいいよねこの子は。


「で、デートする相手もいないのにぃ?」

「日和だったら今すぐにでも出来るって!」

「何言ってんの仁菜の方が先でしょ」


こんなかわいい子放っとく男なんてそうそういないからね!?

むしろ私が付き合いたいくらい。




「じゃあ俺とデートしよ」

「………は?」


私と仁菜のラブラブを邪魔したのは、同じクラスのタカ。

何かと私たちに絡んでくるクラスメイト。

意味のわからないことを言いながら顔を近づけて来たから押し返した。


「タカとは行かないかなぁ~??」

「嘘だろ~?」

「あたしもタカとは行かないなぁ~」

「仁菜まで酷くね!?」