私の前に人はいない。
はっはっと浅く呼吸をしながら私は前だけを見て走る。
このコーナーを抜けたら、目の前にゴールが見える筈だ。
後少し。
一生懸命手足を動かす。後十メートル。五メートル。
―――――――……ゴール!!!
白いテープを切って、私はゴールを走り抜けた。
すぐに電光掲示板に結果が表示される。
そこにあった私の名前は一番上に表示されていた。
わああっと他の部員が私の元にやってくる。
泣きそうになるのを堪えながら、私は槙野くんを見た。
槙野くんも驚いているみたいだった。
「彼氏効果凄すぎだろ!」
メイちゃんがそう言って私の頭をぐしゃぐしゃっとする。
「やっぱ彼氏なんだ?うっわーー幸せ者、うっぜーーー」
「こうしてやるーー」
「え?ちょ、え?」
私は先輩後輩に次々に頭をぐしゃぐしゃとされて、解放された時には髪の毛はぼさぼさだった。
う、酷い。
でも、良かった。本当に嬉しい。