苦しそうな表情を浮かべる槙野くんは、そのまま続けた。


「僕、きっとそうしてた。父さんにいくら止められようと、そうしてた。
僕を消したってその人がいるんだから、勝ち目なんてないじゃないか。
それならその人がいなくなるしかないって」


そこまで一気に言った槙野くんの目には涙が溜まっていた。



「ズルい。僕って、そんなズルい人間だったんだ」


ふるふると震える手を顔の近くまで持っていくと、ぎゅうっと拳を作る。

ねえ、一体誰が何の為にこんな力を授けたっていうの。
槙野くんはこんなにも心が優しいのに。


もしも、槙野くんがそれを実行したとして。
絶対に私には教えてくれない。槙野くんのお父さんの様に。

一人で槙野くんが苦しむなんて嫌だ。


「でも、槙野くんが私を幸せにしてくれるんでしょ?」

「……うん、もちろんだよ」

「ね。槙野くんのお母さん、不幸せそうに見えた?」

「え?」


私がそう尋ねると、槙野くんはこちらに視線を向けた。