「藤さんは僕が思っている以上に心が綺麗な人だったよ」


手を繋いだまま、槙野くんはぽつりと呟く。
さっきの話を聞いて、どうしてそう思うんだろうか。


私は不思議そうな顔で首を傾げる。
そんな私を見てクスクスと笑った槙野くん。


「僕はその人を殺してあげようかって言ったのに、余程僕の方が酷い」

「ううん。それは槙野くんの優しさでしょ?」

「これって優しいって言うのかな」

「槙野くんは優しいよ」

「照れるね」


そう言って笑った槙野くんに私も笑う。



「ん、ケイタイが鳴ってるや。ちょっと待って」


ブーブーと言うバイブ音が聞こえて、槙野くんはポケットからケイタイを取り出した。


「わ、もうこんな時間。電話出るね、ごめん」

「うん」


私に断ると槙野くんは電話に出る。


「ごめんね、思ってる以上に時間経っちゃった。待ったでしょ。うん。連れて行く。わかった」


簡単に話をして電話を切った槙野くんが私に向き直る。
それからどこか気まずそうに切り出した。