「僕がその紗奈さんって人を藤さんの中から殺してあげる」

「……そんなの、出来るの」

「うん。出来るよ」


私の中から今まであった紗奈さんとの嫌な思い出が消えるんだ。
それって凄い嬉しい事だけど。


でも、それなら。


「ううん、大丈夫だよ」

「どうして?藤さんがこんなになるぐらいまで悲しんでいるんだよ」

「私ね、槙野くんから誰か一人の記憶を消せるって聞いた時、真っ先に浮かんだのは嫌いな人間だったの」


手を握ったまま、私は話を続ける。