「槙野、くん」
思っているより遥かに速い彼の登場に、私は驚いた。
槙野くんは私に気付くとホッとした顔をしながら、走り寄ってくる。
「藤さん、よかった」
私の前に立つと、私の無事を確認して安心したように笑った。
それから私の隣に座る。
「大丈夫?」
「……うん」
「涙、止まってる」
槙野くんはスッと手を伸ばすと、私の頬に触れる。
もう涙は止まっていた。だけど、泣いた跡は残っている筈。
「泣いてたらどうしようってずっと思ってた。
大丈夫?藤さんが泣くなんて余程じゃないの?」
「……本当に来てくれるって思わなかった」
「ん。来るよ、当たり前じゃん。どこにだって行くよ」
そう言って、槙野くんはふわりと笑う。
どうしたってその笑顔は優しい。
「ありがと」
またじわりと涙が浮かぶ。今度は悲しいからじゃない。嬉しいから。
槙野くんの優しさが嬉しくて。