「はい」

『もしもし?よかった、出ないかと思った』

「なんで?」

『いや、藤さんから返事なかったから。
嫌だったのかと思って』

「はは、バカだな。そんな事ないって」

『そうだよね。……って、なんか声がいつもと違う』

「え」

『……何かあった?』


心配そうな声が通話口から聞こえる。
その顔まで見えてきそうだ。


『どうしたの?僕でよかったら聞くけど』

「…………」


槙野くんには言いたくなかったのに。
言いたくない。けど、誤魔化せない。


涙がまたぽろっと流れる。
ついさっきまで泣いていたんだ。それは一度流れてしまえば止める事なんて出来ない。