メールを見ながらクスクス笑っていると、玄関の開く音がした。
どうやらお父さんが帰って来たらしい。
私は起き上がると、自分の部屋を出た。
リビングに行こうとしたけど、その足はぴたりと止まった。
誰かの泣き声によって。
これ……、紗奈さんが泣いているよね?
ドキドキしながら少しだけ近付くと、声が聞こえてきた。
「ちーちゃんの、今日のテストの結果が良くなくてね」
「大丈夫だって。紗奈も千風も頑張っているじゃないか」
「ダメよ、ちーちゃんじゃ瑠美子ちゃんにも敵わないもの」
「瑠美子よりも千風の方が優秀だろう?千風はいつも一番か二番じゃないか」
急速に体が冷えていくような気がした。
私をダシにして泣きじゃくる紗奈さん。
そして、それを慰めるお父さんは私よりも千風を褒めていた。
なんだろう、わかっていた事なのに。
私の居場所がここにない事ぐらいわかっていたのに。
今のお父さんは私よりも千風を選んでしまうのだろう。
紗奈さんも、千風も失いたくないんだ。
その為なら私を切り捨てられるんだ。
ズキズキと胸が痛くて、私は自分の部屋に戻ると財布とケイタイを手にして家を飛び出した。