「坂井君の大好物ってカレーライスだよね? いつもすごい勢いで飲み込むから、喉詰まり防止のために坂井家のカレーの具って、全部みじん切りでしょ?」

「……」

「坂井君って、実はジグソーパズルが得意なんだよね? でもウユニ塩湖の三千ピースに挑戦したとき、青と白しかヒントのない風景に挫折して、ヒス起こしてパズルひっくり返してお兄さんに叱られたでしょ?」

 次々と暴露される話に、坂井君の両目がどんどん大きく見開かれていく。

 最初は疑問の色が浮かび、次いで驚きの色が浮かび、そして徐々に疑念と不審の色が浮かんでくる。

 例えるなら、目の前で見せつけられた手品のタネを懸命に探そうとしているような、そんな表情だった。

 あたしにはそんな彼の気持ちが手に取るようにわかる。

 あたしも、そうだったから。

 目の前のありえない事実を前にして、否定したくて、自分にとって安心できるような楽な答えを探しているんだ。

 でも、違うんだよ坂井君。そうじゃないんだ。

 目の前の現実は、どうあっても結局現実なんだよ。

「あたし、本当のこと言ってるんだよ。坂井君」