------ 1ヶ月後 ------
 雨那と聖の特訓は終わり、能力の練度判定を受けていた。先ずは、普通の小雨から始まり、集中豪雨、ゲリラ豪雨、嵐等々と、色々な雨を降らしていった。最初は、全く制御ができず、聖に慰められる日々が続いていたが、よくここまでできるようになったのではないかと、聖は感心していた。しかし、問題は1つあった。スペルカードの使用である。スペルカードとは、その人の能力、想いを弾幕にして放出する、言わば、戦闘技術能力(スキル)である。幻想郷では、スペルカードをスペカとも呼んでいるらしい。
「雨那!スペカを使ってみなさい!」
「はい!」
 雨那は、胸に手を置き、祈りを捧げ、両手を高らかに挙げた。
「天気雨「リカバリーヘイズ」…!」
 雨雲が去り、太陽が目を覚ます。更に、雲一つ無い空から雨が降り出した。その雨は、先程まで実践で荒れた大地を潤し、一瞬の内に、緑豊かな草原へと変化した。これには、聖の感これに極まれりといった表情で見守っていた。
「………ぁ………」
 天気雨が降り終わって、雨那は、その場に倒れ込んでしまった。慌てて駆けつけた聖は、雨那の上体を起こし、頭をそっと撫でた。雨那は、そのまま深い眠りへと誘われた。


時同じくして、別の場所…。青蛾が、雨那の成長を見て、喜びに震えていた。とても、異常な程に、まるで今までの対応が嘘だったかのように、邪念に支配された高らかな笑い声が響いた。聖は、報告の後は何も言わず、その場を後にした。聖にとっては、かなり不愉快であった。幻想郷に異変を起こし、それを成し得ることは、幻想郷の破滅を意味していることだから。しかし、雨那の鍛練については、別だった。雨那の過去の過ちは、自分と似たような物があった。それを悪用して欲しくないから、青蛾からの誘いを受けたのだ。それ以外の理由は一切ない。ただ、雨那がここに来たからには、それ相応の生き方をして欲しいのだ。だが、その役目も終わった聖は、雨那の部屋に手紙を机の上に置き、雨那の頭をそっと撫で、寺を出た。
 翌日、幻想郷には雨が降り始めた。その雨は、とても悲しく、寒い雨だった。