「……はぁっ、なんで、あたしが借りられなきゃ、いけないの……っ、」


「お前しかいなかったんだから、しょうがねぇだろ?」


「ハァ……!?なによ、それ!」


「待てよ、三葉」



グラウンドの端へ転がるように逃げたあたしは、肩で息を繰り返し整える余裕もなくて。


直ぐ様追ってきて、隣に立った玲央が口元に手の甲を押し当てている。


眉根を寄せている表情が微かに赤い。


きっと、それはこの暑さのせいで……。



「オレは、お前が忘れられねぇんだよ……」


「な……っ、何言って……、」


「忘れたことも、忘れようとしたことも一度もねぇよ」


「……っ、」



玲央の揺らぐことのない真剣な声は、青空に線を引く入道雲のように真っ直ぐで。


心の中に蓄積された傷に、優しく触れる……。