グラウンドに向かって駆けていく莉子は、短距離のスタートダッシュを切るみたいに飛び出した。
顎をひいて、前を見据えて腕を振るその姿勢は。
空気抵抗をまるで感じさせないんだ。
「待って……っ、莉っ……!」
追いかけようにもほどけた靴紐につまずいて、しゃがみこむあたしに、秋晴れの太陽の光が遮断される。
ふと、落ちる影ーーー。
暗い視界に、必然的に地から目線をあげると。
「……下手くそ」
太陽を背負ったハニーブラウンがそこにある。
「な、……何、」
いっ、いきなり現れるもんだから心臓に悪い。
そんな……見下ろされたら、誰だって不快に思うことこの上ない。