──side壱──

葵本の姿を見付けて安心したけど、すぐに異変に気付いた。

足のくるぶしを抑えて座り込んでいる──。


「ケガ……?」

そう聞くと、涙声で下を俯きながら勢い良く答える葵本。


迷惑なんて思ってないのに──。


とりあえず冷やさなきゃな…

そう思って、カバンやポケットを探すけど、持っていなかった。


ハンカチぐらい持っとけよ、俺──……


葵本にハンカチを借りて、
慌ててミネラルウォーターを屋台へ買いに走った。


ペットボトルの蓋を開けて、
ハンカチに水を染み込ませた。

ハンカチを足に巻いて、歩きにくい葵本に手を差し出した。


下を俯きながらも差し出した手に答えてくれた葵本が可愛くてたまらなかった───。