しばらくして人だかりの中を掻き分けて、誠也が浮かない表情をして戻ってきた。
「壱……」
「え…?」
もしかして… 落ちた?
目の前で親友が暗い表情をしている。
親友の口から、落ちてたって聞くことになんのか……
暗いことしか考えられなくて、そう思った。
「合格してた…」
「え?」
「だから、俺ら受かったんだって!」
思わず聞き返すと
誠也は嬉しそうに答えた。
「紛らわしいことすんじゃねーよ…」
「迫真の演技だったろー?」
いつも通りに笑いながら言う誠也。
…忘れてた。
誠也は、こういうことをするやつだった。
「嬉しさ倍増だろ?
高校でも俺ら一緒だなー」
緊張して合否を待っていた俺は、紛らわしいことをした誠也に少しムッとした。
落ちたと思った俺、バカみたいじゃん……