ほんの少し距離をあけて
野上くんの隣を歩いていた。


少し進むと──…

いきなり上や横から飛び出してきた作り物のミイラ。


「きゃあぁああっ!!!!」

壁づたいに設置された足下の小さな風船を踏んだりして、悲鳴をあげて驚いていた。


──…クラスの出し物だと思っていたのは甘い考えだった。


あまりの怖さに、
条件反射で掴んでいた服ごしの腕に、その時は気付かなかった──…。


10分前後の、お化け屋敷を歩き終えて、やっと見えた明るい光に胸を撫で下ろしたときに気が付いた──…。


「──…ご、ごめんっ!!」


「──…や、いいけど。
無理なら言ってくれたらよかったのに。」


「こんな怖いとは思ってなくて──…。
甘かったぁ。」


──せっかく一緒にまわれるのに、場所なんて選んでらんないよ───…。


「──…ちょっと待ってて!」

廊下に、もたれかかって休んでいるあたしに言って走ってく野上くん──…。


行っちゃった──…

そう思いながら待っていると、10分も経たずに戻ってきた。


「──…頑張ったご褒美みたいな感じで。」

息を切らしながら渡してくれたものを受け取った。


──…ご褒美。

迷惑をかけちゃったかと思ってたのに、そう言ってくれて嬉しかった──…。