「さぁ、こちらへ。」

商売女独特の、毒々しい罠の笑顔。

この顔で、何人の男を糸で絡めて養分にしたのだろう・・・。

長い足を伸ばし、決して逃げられない罠を張って、じっと餌がかかるのを待ち続ける―。

女郎蜘蛛が頭に浮かぶ。ニタリと笑う顔は、笑顔眩しい女の顔。

自分と重なるからか、虫の中でも一番嫌いだ。

「すいません。ありがとう。」

「いえ。大したことありませんわ。お布団以外に必要なものありまして?」

「とりあえず、水と手拭いがあれば。」

「えぇ、分かりましたわ、山崎さん。」

「!?」

咄嗟に手に取った脇差しを慌てて下ろす。

「・・・何故、知っているんですか。」