「……、」
そっと目をひらくと、そこはあたたかな日差しが照らす明るい居間。
……朝……。
少し重い瞼をゆっくり上げると、目の前には右腕を私の枕にして、左腕で抱きしめるような形で私を包む新太がいた。
ふたりの体には毛布がかけられ、足元ではトラが寝ているのだろう。ふわふわとした感触が足に当たる。
「すー……」
小さな寝息をたてる新太の綺麗な寝顔を見つめて、なんで新太とここに……そう考え、昨夜のことを思い出す。
そういえば昨夜は、新太と動物病院から戻って、ごはんを食べて、一晩中話をした。
『なぎさのこと、聞かせて?すこしずつ、ゆっくりでいいから』
時間をかけて、少しずつ話した私のことを、新太は全部聞いてくれた。
『うん、うん』とうなずいて、ひと言すらも聞き逃すことなく。
やわらかな声と笑顔で、全てを包んでくれる。その優しさが眩しい。
あたたかくて、愛おしくて、涙があふれて
心が、満ちていく。
ありがとう、新太
ありがとう
ありがとう
何度心の中で繰り返しても、伝え切れないほどの気持ち。
それを伝えるように、新太の胸に顔をうずめた。
今日も、私は生きている。
新太と、トラと
ここに いる