その日から私は、心を塞いだ。

家から出ず、誰との会話も拒み、両親とすらも極力顔を合わせることもせずに。



そんな風に夏休みを過ごし、それは2学期になっても変わらず、学校へ行くことはなかった。

いや、正確には『行けなかった』。

教室へ行く、可奈子たちと顔をあわせる、それを想像しただけで吐き気がした。



自分以外誰もいない家は、相変わらず静かで

朝焼けの空を見ては

のどかな昼間の住宅街を見ては

夕暮れの踏切の音を聞いては

夜空に広がる星を見ては

毎日毎日、生と死のことを考えた。

存在意義を考えた。



どうして

どうして

どうして



生きているんだろう

死ねないんだろう

心が悲しいんだろう



この胸を覆うこの闇は、これから先もずっと続く。

終わることなくずっと私にまとわりついて、いつか今度こそ、私は自ら飛び込んで、自分の人生を終わらせるだろう。



そう、思っていた。



けど、飛び出してきた先のこの場所で、新太は短い時間の中で教えてくれた。

『寂しい』と、言ってくれた。



こんな私のことを思ってくれている誰かがいる。

視野を広げれば、小さな希望はいくつもある。

そんなことに今更気付いた自分が少し悔しい。

だけどその感情があるだけで、心が軽くなったんだ。



私、変われるかな。

時間は少しかかってしまうかもしれないけど、まだ世界は怖いものであふれているけれど。

それだけじゃないって、信じられる日がくるかな。



……くる、よね。

だからまずは一歩、ここから始めよう。



生きていく理由と、やっと出会えたから。