ちょうどカンカンカン……と鳴り出す警告音に引き寄せられるように、一歩一歩、踏切へ近付いた。
死のう
ラクになろう
痛いかな、つらいかな
だけどもう、生きる方が苦しい。
遮断機をくぐると、ガタンゴトン……と近付く電車が視界の端に見えた。
迫る音に、止まる足。
あと一歩進めば、体は確実に電車にあたる
三歩進めばど真ん中だろう
息を止め、踏み出すその時を待つ。
……なのに。
『死にたい』、そう強く思っていたはずなのに、足が一ミリも動かなかった。
なんで動かないの、なんで踏み出せないの。あと一歩、あと少しなのに。
混乱したように自分の足を殴る。けれど、動かないまま電車は近づき、なにもできないまますぐ目の前を電車が走り抜けた。
鼻の先ぎりぎりのところを、物凄いスピードで通り過ぎる。激しい風圧に肌がビリビリと痺れるのを感じた。
『君!なにをしてるんだ!』
偶然通りがかった人に連れられ、なんとか踏切の外に出た。
その時、触れられた肩の感触に、自分がまだ生きていることを実感した。
生きて、いるんだ。
その瞬間、ほっとした自分が憎い。
生きる方がつらいと感じたはずなのに、死を選ぶことが出来ずに生きている。
それどころか、安堵まで感じるなんて。
自分はどこまで弱い人間なんだろうと、そのまま地面に座り込んで泣いた。
警察に保護された後も、ひとりずっと泣いて、連絡を受け数時間後に駆けつけてきた両親も、そんな私を見て泣いていた。