『俺、深津さんのことが好きなんだ』
『……え……?』
始業式の後、ふたりきりの教室で彼は私を好きだと言った。
もちろん私は頷くことはなく、断った。けれど可奈子は一部始終を見ていたようで、そこからだった。すべてが壊れていったのは。
『なんで……?』
『え?可奈子……?』
『なんでなぎさなの!?なんでっ……』
いつもの笑顔は、戸惑い、悲しみ、徐々に怒りにゆがんで私を睨んだ。
『……本当、ムカつく。友達もいないかわいそうな子だから一緒にいてあげたのに!!なんで私じゃなくてなぎさなの!?』
『……え……?』
『もういい!!あんたなんていらないっ……友達じゃない!!』
ショック、だった。
ずっと親友だと思っていたのは私だけで、向こうは『かわいそうだから』『一緒にいてあげていた』、そんな気持ちでいたんだ。
一晩中泣き腫らし、だけど明日には『ごめんね』って笑えるかもしれない、なんて淡い期待を込めて登校した次の日。
学校へ行けばすでにクラス中その話で持ちきりで、つい昨日まで一緒に笑っていた友達はみんな冷たい目で私を見た。
『なぎさが可奈子の好きな人取ったらしいよ』
『うわ……サイテー。前からなんかあやしいと思ってたんだよね』
誰ひとりとして私の話など聞いてくれなかった。
手のひらを返したような態度で、可奈子を守るように囲み、一斉に私と距離を置く。