スポーツ科学を中心に教える深津先生は、授業も分かりやすくて、親身になってくれる、いい先生だ。
けれど以前、『家族のために働いてきて、でも気付けばそればかりでなにも思い出を作ってやれなかった』と言っていた。
そのことから、きっと自分の家庭に関しては上手くいかないこともあるのだと思う。
深津先生は俺にお茶のペットボトルを差し出すと、隣に腰を下ろした。
『授業は?今栄養学の時間だろ』
『んー……なんとなく、出たくなくて』
生徒の家庭の事情なども、先生たちの間の話題でなんとなく把握しているのだろう。
力ない俺の言葉からなにかを察したように、深津先生は自分の分のペットボトルを一本あけた。
『お前、大丈夫か?ちゃんと飯食ってるか?』
『んー、そこそこかな。最近あんまり食欲なくてさ』
『ちゃんと食わなきゃ倒れるぞ』
元々そこまでがっしりした体ではないけれど、ここ最近で痩せたのが自分でも分かる顔で、『へへ』と笑ってみせる。